昆布×仏教
【◯◯×仏教】は、身近なものと仏教の関係を考えてみよう、という企画です。シリーズ第3回は、昆布×仏教です。
精進料理には欠かせない昆布ですが、曹洞宗の大本山である永平寺、總持寺でもだしや煮物、揚げ物として使われています。たとえば、お寺に参拝して精進料理をいただくと「あじろ昆布」が出てきますが、これは手作業で編んだ昆布を素揚げしたものです。
参考 http://www.konbu.jp/culture/konjyaku/saiku.shtml
日本仏教のなかでも、曹洞宗は特に食事を重んじます。食事を「作る」そして「食べる」という行為が、ただお腹を満たすための手段ではなく、坐禅や読経などと同じ立派な修行だと考えるからです。
修行道場では料理をつかさどる寮舎を典座(てんぞ)といいますが、非常に高い地位を与えられています。典座寮員が心を込めて料理をつくり、雲水(修行僧のこと)たちはそれに真剣に向き合って食べる。これがまさに修行であり、そのまま悟りであるというのが道元禅師の思想です。これを修証一如(しゅしょういちにょ)といいます。修行と証(悟り)は同じである、ということですね。実生活では、ついついテレビを見ながら適当に食事をすませたり、友達と会話に夢中になっているうちに食事が終わっている、なんてことも多いかと思いますが、修行道場で食事を頂く際には、雲水たちはひと言も発せず、黙々と食事をします。料理を「作る」のも「食べる」のも大事な修行なのです。かくいう私の家でも、子供のころは、テレビを見ながら食べるというのは厳禁でした。料理を作ってくれた方にも失礼ですし、食べる方も漫然と食べてしまいます。さらには「食事」という行為自体が非常に軽視されてしまうからです。
さて、そんな大事な料理の味をきめる昆布は、あらゆる食材のなかでも特に重視されるといっていいでしょう。栄養価が高く、保存のきく昆布は、精進料理にとって欠かせないものです。永平寺の御昆布司(おこぶし)として、北海道の昆布を納めているのは敦賀の奥井海生堂というところで、四代目主人が『昆布と日本人』(奥井隆)という書物を出しています。
ちなみに道元禅師の『典座教訓・赴粥飯法』(講談社学術文庫)の解説・翻訳には、松雲寺の現住職が関わっておりますので、興味のある方は手に取ってみてくださいね。